
「今年の源泉徴収票、見た? 去年より100万上がってた!」
昇給、おめでとうございます。
仕事の成果が数字として表れると、自信がつきますよね。そして、年収が上がると世の中の対応も変わります。特に「銀行」は顕著です。
「年収800万円のお客様なら、8,000万円まで融資可能ですよ」
窓口でVIP扱いされ、これまで手が届かないと思っていた都心の物件が、急に射程圏内に入ってくる…。
ここに、高年収の方ほど陥りやすい最大の罠があります。
「銀行が貸してくれる額」は、決してあなたが「余裕で返せる額」ではありません。
今日は、給料が上がった時こそ気をつけたい「年収倍率の盲点」について、あるITコンサル勤務の男性(Hさん)の事例をもとに解説します。

現役銀行員 | BANKER × FAMILY
「年収が上がると、銀行は喜んで貸してくれます。でも、それは『あなたが返せる額』とは限りません。 現役銀行員として審査の裏側を知る私が、 年収800万円世帯が陥りやすい『高額ローンの罠』と、 資産を守るための 『適正予算の考え方』を解説します。
この記事の目次
1. 【事例】都心で勝負したい夫 vs 郊外で暮らしたい妻
今回のご相談者は、まさにキャリアも収入も右肩上がりのHさんです。
- 職業: ITコンサルティングファーム勤務(シニアアソシエイト)
- 年収: 800万円(昨年比+100万アップ)
- 家族: 妻(専業主婦)、長女(2歳・イヤイヤ期)
- 現在の住まい: 郊外の賃貸アパート(2DK)
年収アップにより、銀行の借入可能額が増えたHさんは、いま2つの選択肢で迷っています。
- プランA:都心の資産価値重視(8,000万円)
通勤に便利な準都心エリアの中古マンション。「これからのキャリアを考えれば時間は金。資産価値も下がらないし、俺の稼ぎならいけるはず」 - プランB:郊外の住環境重視(6,000万円)
今のエリアで、広々とした新築または築浅。奥様の希望。「2歳児と今の狭い家は限界。広いリビングと公園が欲しい」
Hさんの言い分はこうです。「8,000万でも年収の10倍。これからの昇給ペースを考えれば、決して無茶な数字じゃないはずだ」。
果たしてそうでしょうか? 銀行員の私から見ると、プランAには3つの「見えない落とし穴」が潜んでいます。
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2. 銀行員が教える「高年収の落とし穴」
Hさんの「いけるはず」という感覚に対し、冷静な数字のメスを入れてみましょう。
① 「手取り」は額面ほど増えていない
年収が上がると、同時に税金と社会保険料も上がります(累進課税)。
年収800万円の方の手取り年収は、約580〜600万円(月平均 約50万円)です。
銀行は審査の際、「額面(800万)」で計算しますが、あなたが毎月のローンを支払う原資は「手取り(600万)」です。「審査上の返済比率」と「生活実感としての返済比率」には、大きな乖離があることを忘れてはいけません。
② 「一本足打法(単独ローン)」のレッドゾーン
Hさんのご家庭は、奥様が専業主婦です。つまり、Hさんの収入が途絶えた瞬間、家計はアウトになります。
夫婦共働きの「世帯年収800万」と、一馬力の「年収800万」では、リスクの桁が違います。
流動性の高いIT業界で、単独ローンで年収倍率10倍(8,000万円)を組むのは、銀行員としては「レッドゾーン(極めて危険)」と言わざるを得ません。
③ 「資産価値」の本当の意味
Hさんは「都心=資産価値が高い」と考えています。確かに物件価格は下がりにくいでしょう。
しかし、「カツカツのローンで余裕のない生活」を送ることは、あなたの人生のQOL(生活の質)を高めるでしょうか?
本当の資産価値とは、「家そのものの値段」だけでなく、「毎月のキャッシュフローに余裕を持たせ、投資(NISA等)にお金を回せる状態」を作ることで生まれます。
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