
こんにちは。現役銀行員ブロガーのチャルトンリサです。
「住宅ローン金利は0.5%。S&P500の期待リターンは5%。
差引4.5%のプラスなんだから、繰り上げ返済なんてナンセンス(機会損失)だ」
この数年、SNSやYouTubeで主流だったこの「正解」。あなたも実践していませんか?
確かに、計算上は正しいです。これまでは。
しかし、日銀の利上げで潮目が変わりました。
銀行員として警告します。その「最強の数式」には、「暴落」と「利上げ」が同時に来た時の"メンタル耐久値"が計算に入っていません。

現役銀行員 | BANKER × FAMILY
「金利が上がっても運用益でカバーできる」というロジックは、あくまで平時の理論です。 現役銀行員として相場の変動と家計破綻の現場を見てきた私が、 合理主義者が陥りやすい 「流動性リスク」と「家庭内不和コスト」について解説します。
1. 【事例】データ重視・Dさん(36歳)の強気と不安
まずは、典型的な「合理主義投資家」であるDさんの事例を見てみましょう。
- 年齢・職業: 36歳、メーカー勤務、年収750万円
- 住宅ローン: 5,500万円のフルローン(変動0.475%)
- 資産運用: 手元資金は繰り上げ返済せず、全て「新NISA(オルカン)」へフルベット
- スタンス: 「住宅ローン控除が終わるまでは、絶対に返さない。低金利の借金こそ最強のレバレッジだ」
理論上は勝っているはずのDさん。
しかし最近、ニュースで「金利引き上げ」を見るたびに、妻から「少しは返して安心させてよ」と言われ、言い返す言葉が弱くなってきました。
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2. 合理主義者が陥る「3つの誤算」
Dさんの完璧に見えるロジックには、銀行員視点で見ると致命的な「穴」が3つあります。
① 「逆ザヤ」は突然やってくる
「運用益(5%)> 金利(0.5%)だから勝てる」というのは、あくまで平均値の話です。
株価は一直線に上がりません。もし「リーマンショック級の暴落(株価-50%)」と「インフレ抑制のための利上げ(金利2%へ上昇)」が同時に起きたらどうしますか?

資産は半減して含み損だらけ、なのに毎月の返済額は増える。
この状態で「それでも売らずに持ち続ける握力」が、あなたにありますか?
② 「繰り上げ返済」は不可逆だが、「投資」は流動的すぎる
「困ったらNISAを売ればいい」と言いますが、暴落時にNISAを取り崩すのは、投資効率として最悪の「損切り」です。
一方で、繰り上げ返済をしてしまうと、手元の「現金」が消えます。一度返したお金は、銀行は簡単には貸してくれません。
合理主義者が一番重視すべきは、リターン率ではなく「手元のキャッシュ(流動性)」です。
「返さない」のは正解ですが、「フルインベストメント」はリスクが高すぎます。
③ 妻の「安心」という見えない配当
Dさんは「妻の不安は感情論であり、非合理的だ」と考えています。
しかし、家庭経営において、パートナーの不安を放置するのは「最大のリスク要因」です。
暴落時に妻から「ほら見たことか!」と責められ、家庭内の空気が地獄になるコストを計算に入れていますか?
「精神的安定配当(Psychological Dividend)」を得るために、一部を返済したり、現金を厚くしたりするのは、実は極めて合理的なコストです。
3. 銀行員が推奨する「ハイブリッド戦略」
「全額投資」か「全額返済」かの0か100かではなく、金利上昇局面に適したバランスを提案します。
戦略① 「生活防衛資金」の再定義
投資に回す前に、現金の厚みを増やしましょう。
これまでは「生活費の6ヶ月分」と言われてきましたが、変動金利ユーザーは「生活費1年分 + 金利上昇バッファ(100万程度)」を現金で確保してください。
これさえあれば、株が暴落しても狼狽売りせずに済みます。
戦略② 「繰り上げ返済」のトリガー(発動条件)を決める
感情で動かないよう、あらかじめルールを決めましょう。
- 「変動金利が1.5%を超えたら、資産の一部を売却して元金を減らす」
- 「住宅ローン控除(10年/13年)終了時、一括で期間短縮する」
今すぐ返す必要はありませんが、「いつでも返せる準備(現金化)」だけはしておきましょう。
戦略③ 妻へのプレゼンを変える
論破するのはやめましょう。
「君の言う通りリスクもあるから、ボーナスの半分は『返済用定期預金(絶対に投資に回さない口座)』に入れてプールしておくよ」
これで妻の安心感を得つつ、実際にはまだ返済せず手元に現金を残す(流動性確保)ことができます。
まとめ:本当の「合理性」とは、生き残ること
「計算上の正解」が「人生の正解」とは限りません。
NISAで攻めるなら、守り(現金)も鉄壁に。
金利上昇時代は、「借金と資産の両建て」をコントロールできる人だけが勝てる時代です。
「利回りが高いから」という理由だけで思考停止せず、家族の安心とポートフォリオのバランスを今一度見直してみてください。
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