
「もし4,000万円借りても、月々の返済は10万円。今の家賃とほとんど変わりませんよ!」
住宅展示場や不動産屋さんで、こんな甘い言葉をささやかれたことはありませんか?
年収500万円。日本の平均的な所得層ですが、実は今、住宅ローンにおいて「最も無理をしてしまいがち」な危険地帯でもあります。
銀行員として断言します。
「家賃並みで買える」という言葉は、半分正解で、半分は大嘘です。
今日は、年収500万円のパパ(Sさん)の実例をもとに、銀行が決して教えてくれない「隠れコスト」の正体と、家族を守るための「本当の適正予算」について解説します。

現役銀行員 | BANKER × FAMILY
銀行員歴10年以上。個人の住宅ローン審査を数多く担当。「審査に通る額」と「生活できる額」のギャップに苦しむ家庭を減らすため、銀行の裏側から発信しています。
1. 「銀行が貸してくれる額」の落とし穴
今回のご相談者、Sさん(32歳)の状況を見てみましょう。
- 年収:500万円(手取り月収 約26万円)
- 家族:妻(パート年収100万)、娘(3歳)
- 現在:家賃9万円の賃貸
- 検討中:4,000万円の新築戸建て(フルローン)
- 銀行審査:「年収の8倍までOK」と言われ、4,000万円の事前審査通過済み。
Sさんは「銀行が4,000万貸してくれるんだから、俺にはそれだけの信用力があるし、返せるってことだよね?」と安心していました。
ここに大きな間違いがあります。
銀行の審査は「額面年収」で見ますが、あなたが生活するのは「手取り年収」だからです。
2. 実録:手取り26万vsローン10万の生活
では、Sさんが4,000万円の家を買った後の生活をシミュレーションしてみましょう。
(変動金利0.5%・35年返済・ボーナス払いなし)
【収入】
夫の手取り:260,000円
【支出】
住宅ローン:103,834円
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残り:156,166円
家族3人、残り15万円で生活できますか?
食費、光熱費、通信費、保険、ガソリン代…。さらに、娘さんはこれから幼稚園に入り、教育費がかかり始めます。
これまでは「家賃9万円」を引いても17万円残っていましたが、購入後はカツカツ、いや、完全に赤字です。
「え? でも家賃と1万円しか変わらない計算では?」
そう思った方。次の章が、不動産屋が教えてくれない「真実」です。
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3. 「家賃並み」には含まれない3つの爆弾
持ち家には、賃貸にはなかった「ランニングコスト」が必ず発生します。これが「家賃並み」の嘘の正体です。
① 固定資産税(月換算:約1.2万円)
新築戸建ての場合、年間10〜15万円ほどの請求書が毎年届きます。
賃貸のときは大家さんが払ってくれましたが、これからはあなたが払います。
② 修繕積立金(月換算:約1.5万円)
戸建てに管理費はありませんが、10年〜15年後の「外壁塗装」「給湯器交換」などで150万〜200万円が必要です。
毎月自分で積み立てないと、その時になって借金を重ねることになります。
③ 変動金利の上昇リスク
今のシミュレーションは「0.5%」という超低金利前提です。
もし金利が1%に上がったら、月々の支払いはさらに約1万円増えます。
【結論】
ローン10.4万 + 税金1.2万 + 修繕1.5万 = 実質住居費 13.1万円
今の家賃9万円より、毎月4万円以上も負担が増えるのです。
年収500万円の手取り額で、この「プラス4万円」を捻出するのは至難の業です。

4. 年収500万世帯の「生存戦略」
「じゃあ、一生賃貸でいろってこと?」
いいえ、違います。「身の丈に合った買い方」に変えればいいのです。
戦略A:適正予算は「2,800万円」まで
年収500万円の場合、無理なく返せる(手取りの25%以内)借入額は、約2,500万〜2,800万円です。
新築は諦め、「中古戸建て + リノベーション」や、少しエリアを広げて探してみてください。
戦略B:妻の「扶養」を外す覚悟
どうしても4,000万円の家が欲しいなら、Sさん一人の年収では足りません。
奥様が扶養を外れて年収200〜300万円稼ぎ、世帯年収を700〜800万円に上げる覚悟が必要です。
「家を買う」とは、それくらいのチーム戦なのです。
まとめ:家は「箱」ではなく「生活」
立派な新築(箱)を手に入れても、その支払いのために家族旅行を我慢し、子供の習い事を諦める生活は幸せでしょうか?
銀行員としてお願いします。
「銀行が貸してくれる金額」で家を選ばないでください。
まずは、今の家賃に「+4万円」払っても生活できるか、数ヶ月試してみてください。
それができないなら、4,000万円の物件には手を出してはいけません。
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