
「お二人の世帯年収なら、1億円のマンションでも全く問題ありませんよ!」
不動産屋の明るい声を聞きながら、あなたは心の中でこう思っていませんか?
「いやいや、一昔前なら1億円なんて会社経営者とかが買う『億ション』でしょ? 普通の会社員の私たちが手を出して、本当に大丈夫なの?」
銀行員として、ハッキリお答えします。
あなたのその違和感、そして恐怖感は、100%正しいです。
夫婦ともに大手町・日本橋エリアに勤務し、第一子が生まれるのを機に都心マンションを検討するパワーカップル。
今日は、世帯年収1,200万円の最強夫婦が陥りやすい「年収倍率9倍の罠」と、不動産屋が決して教えてくれない「出産後のリアルなキャッシュフロー」について解説します。
目次

現役銀行員 | BANKER × FAMILY
メガバンク等で数多くのペアローン審査を担当。狂乱する都心マンション相場において、不動産営業のオーバートークに流されず、「子供が生まれても破綻しない」堅実な資金計画を提案している。
1. 不動産屋の「年収9倍でも大丈夫」のカラクリ
今回のご相談者、Tさんご夫婦はともに33歳。夫600万・妻600万の世帯年収1,200万円です。
不動産業界では今、「1億円でも、世帯年収(1,200万)の8.3倍だから、審査も通るし適正範囲内です」というセールストークが蔓延しています。
しかし、一昔前までの銀行の常識では、「住宅ローンは年収の5〜6倍まで」が鉄則でした。
なぜ今、8〜9倍でも「大丈夫」と言われるのでしょうか?
それは単に、「超低金利だから(ギリギリ)毎月の支払いが回るから」に過ぎません。
借金が1億円という事実は変わりません。
金利上昇局面に入っている今、この「低金利という薄氷」の上で年収の8倍以上の借金を背負うのは、極めてリスクが高い状態です。
2. 手取りから逆算する「億ション」のリアルな支払い
では、1億円のマンションを買った場合の、毎月のリアルなキャッシュフローを計算してみましょう。
(※1億円フルローン、変動金利0.5%、35年返済の場合)
- 住宅ローン返済:約26万円
- 管理費・修繕積立金:約4万円(都心物件は高額)
- 固定資産税(月割):約2万円
- 住居費合計:月32万円
世帯年収1,200万円の手取り額は、ボーナスを均して月額換算すると約75万円です。
そこから32万円が引かれると、残りは43万円。
「43万円あれば余裕じゃないか」と思うかもしれません。
しかし、これから生まれてくるお子さんの教育費、都心の高い物価、そして何より「次の章で解説するリスク」を考えると、この数字は一瞬で吹き飛びます。
スポンサーリンク
3. 第一子誕生という最大の「不確実性」
この資金計画が破綻する最大のトリガーは、「妻の働き方の変化」です。
世帯年収1,200万円を維持するには、奥様が出産後も「一切ペースを落とさず、時短勤務も使わず、すぐに年収600万円稼ぐフルタイムに戻る」ことが絶対条件になります。
しかし、現実はどうでしょうか。
- 都心(千代田区・中央区など)の激戦区で、希望の保育園に入れるか?
- 子供が熱を出した時、夫婦どちらかが仕事を休めるか?
- 体力的な限界から「時短勤務」を選択した場合、奥様の年収は600万→400万に激減します。
もし世帯年収が1,000万円(手取り約60万円)に落ちた場合、手取りの半分以上(32万円)が住居費に消えることになり、途端に家計は火の車になります。

4. まとめ:一昔前の「直感」を信じ、冷静な計算を
「自分たちのような普通の会社員が、1億円の家を買っていいのか」
その直感は、正常な防衛本能です。無視してはいけません。
1億円のマンションを買う前に、必ず以下の「ストレステスト」を夫婦で行ってください。
- 金利が1.5%まで上がったら、月の支払いはいくらになるか?
- 妻が時短勤務になり、年収が3割減っても生活できるか?
もしこのテストに耐えられないなら、1億円の物件はあなたにとって「オーバースペック」です。
職住近接は魅力的ですが、通勤時間をあと15分〜20分妥協すれば、7,000万〜8,000万円台で優良な物件が見つかるはずです。
家のために働くのではなく、家族が笑って暮らせる「余裕」を残す選択をしてくださいね。
スポンサーリンク